空港を横断する教育訓練改革へのMonoxer活用。ANAグループの「人にしかできない価値創造」を基礎知識の定着で支える

全日本空輸株式会社(ANA)は1952年設立以来、国内外の人とモノのつながりを拡大し、質の高いサービスでファンを獲得し続けてきました。同社は更なる品質向上を目指して、新たな教育訓練の変革に着手しています。今回は、その一環として2025年12月に行ったMonoxer活用の実証実験についてお話を伺いました。(本記事は、2026年3月5日取材時の内容になります。)


お客様情報
⚫︎ 企業名:全日本空輸株式会社
⚫︎ 業種:航空運送・旅行
⚫︎ 従業員規模:5000人〜
⚫︎ 取材ご対応者様:エアポートセンター 教育訓練部 教育訓練企画チーム 松野あかね 様

Monoxer活用シーン(実証実験)
⚫︎ 推進部署:教育訓練部
⚫︎ 学習者属性:ANA国際線就航空港スタッフ
⚫︎ 学習者数:50~100名
⚫︎ 活用シーン:業務基礎知識の習得
⚫︎ Monoxer PoC実施年度:2025年


導入事例サマリー

導入背景(目的・課題)

⚫︎ 人にしかできない新たな価値を高めるために、全社的に変革を進めており、そのひとつの要素として教育訓練の変革を位置づけている。

⚫︎ 空港部門では、これまで領域ごとに係員の教育訓練を実施していたが、さらなるサービス品質の向上を目的に、部門横断で教育訓練を企画・運営することとなった。
⚫︎ 各業務の土台となる基礎知識を効率的に習得するためには、入社後の集団教育によるインプットと実務におけるアウトプットの間にある「定着」のプロセスを強化する必要があると考えた。

取り組み

⚫︎ 2026年4月、国際線旅客係員の新人研修での本導入のため、ANA国際線就航空港において1ヶ月間のABテストを行い、Monoxerの学習効果を検証。

効果

⚫︎ テキスト学習と比較して約15倍の学習効果の差が見られ、本導入が迷いのないものに。
⚫︎ 学習プロセスの見える化により、教育訓練中の個別指導にも活用できる可能性が浮上した。

【導入背景】大前提である「安全」を担保しながら教育訓練を変革する。新たな価値創出に向けた実証実験

ーー御社の事業内容における、松野様の所属部署のミッションや目標について教えてください。

松野:私の所属する教育訓練部は、全空港約100拠点で働くANA係員の教育訓練を所管する部署です。

当社空港部門では、搭乗手続きなどを行う旅客サービス業務や地上運航支援業務、搭降載などを担うグランドハンドリング業務、航空貨物に携わる業務など、領域毎に係員の教育訓練を行ってきました。これは、それぞれの職務が高い専門知識と経験を要するからです。

しかし、これまで以上にサービスの品質を高めていくためには、空港業務を「点」ではなく「面」として捉え、横断的な視点で教育訓練を企画・運営していく必要があります。そのような課題意識のもと、2025年4月に新たに立ち上げられた部署が、教育訓練部です。

ーー同年12月にMonoxerを活用した実証実験を行った背景には、どのような狙いがあったのでしょうか。

松野:つい先日発表された『2026-2028年度 ANAグループ中期経営戦略』にもあるように、当社は最少人数で最大価値を創造するため、デジタルを徹底活用し、各係員が「人にしかできない部分」に注力できる状態を作るべく変革を進めています。

お客様に「人」が決め手となる心に残る温もりや期待を超える感動を提供していく、そのためには、各業務の土台となる基礎知識が欠かせません。

この基礎知識をより効率的に身につけられるようにするためには、入社後の集団教育によるインプットと実務におけるアウトプットの間にある「定着」のプロセスを強化する必要があるのではないか。そのように考え、今回のMonoxerの実証実験を行うに至りました。

ーー新たな価値を生み出すためには、基礎部分の教育プロセスの見直しこそが重要だと考えられたのですね。

空港業務において何を置いても優先しなくてはならないのは、安全です。当社空港部門の各領域の教育訓練は「従来の品質水準を万が一にも下回ることがないように」と細心の注意を払って積み上げられてきたものですから、この教育プロセスの見直しは大きな決断でした。

ーー数あるツールの中からMonoxerを選んでくださった、その理由を教えていただけますか。

松野:各社のツールそれぞれに魅力的な機能があったのですが、膨大な知識を効率よく記憶定着させることを目指すMonoxerは、私達の抱える課題に真正面から取り組むソリューションでした。

実は、ANAグループの貨物部門では、2019年にMonoxerの導入を検討したことがありました。当時の担当者が「Monoxerは知識を『筋肉』として使えるようにするツールだ」と話していましたが、全く同じ印象を私も持ちました。

以前導入の障壁となったのは問題作成の労力という課題でしたが、生成AIと、より手厚くなった御社のサポートがあればクリアできると判断できたため、今回初めてMonoxerを活用した実証実験実施を決めました。

【取り組み内容】教育訓練部の呼びかけに複数空港が全面協力。多忙な業務に従事する50名以上のボランティアによるABテスト

ーー2025年12月の実証実験の概要について教えてください。

松野:今回の実証実験は、2026年4月国際線旅客サービス部門の新入社員教育への本導入を検討するために行いました。空港で働く社員のうち、国際線の知識を持たない社員を対象にボランティアを募り、50名以上が参加してくれました。

彼らをAとBの2グループに分け、同じ内容・教材を、ペーパーテキストとMonoxer、それぞれ2週間ずつ交代で、合計1ヶ月間の学習に取り組んでもらいました。学習前後に確認テストを行い比較することで、Monoxerの学習効果がどれほどあるのか検証しようと試みたのです。

Monoxerの学習コンテンツには、2025年度の国際線旅客係員の新入社員向けテキストの中から、教育訓練部が必須項目を定義・精選したものを搭載しました。モノグサ社CS担当の方の全面的な協力のおかげで、充実した内容に仕上げることができました。

ーー実証実験をスムーズに進めるために工夫した点、実施期間中に苦労した点について教えてください。

松野:参加者の学習へのコミットメントが最も難しい部分でした。教育のために時間を確保できる新入社員とは異なり、参加してくれた社員には通常の業務があります。安全のために細心の注意を払って業務をこなしつつ、日々発生するイレギュラーにも対処しなくてはならない。「スキマ時間に学習を」とは言っても、「どこにスキマ時間があるのか」というぐらい、一人ひとりが空港を駆け回っている。そのような中、自分の業務と直接関係のない知識の学習に、どれだけのスタッフが意欲的に参加してくれるのか。正直なところ、そこが懸念でした。

しかし、私達の急な呼びかけにも関わらず、各空港の教育担当の方々が積極的に動いてくれたおかげで、50名以上のボランティアを集めることができました。長年現場の教育と向き合ってきた方々の理解と協力なくして、今回の実証実験は出来なかったと思っています。

【効果実感】テキスト学習と比べ、学習効率は大きく向上。予想していなかった「学習プロセスの見える化」に現場担当者も注目

ーー実証実験の結果と、率直な感想をお聞かせください。

松野:Monoxerでの学習とテキスト学習を比較し、「1分あたりの学習でどれだけ得点が向上したか」という観点で学習効率を測定したところ、Monoxer利用時は1分あたり0.16点、未利用時は0.011点と、約15倍の差が見られました。効果の数字に関しては、事前に全く予測がつかず「学習時間を10%程度削減できれば良い」と考えていたので、この結果には本当に驚きました。

ペーパーテキストで学習を進める場合は、数百ページにも及ぶ出題範囲の中で何が出題されるのか予測を立てなくてはいけませんが、Monoxerなら「ここを憶えてほしい」と要点をピンポイントで押さえることができます。ピンポイントで記憶事項を指定することができれば、Monoxerのほうがより短い時間で確実に知識としてものにできると感じています。

また、Monoxerは一人ひとりの憶えられていない内容を繰り返し出題してくれる、これも圧倒的な差につながった要因ではないかと分析しています。

「本当なのか」と半ば疑ってしまうほどの結果でしたが、統計的に有意であることも検証していただいたことで、本導入する価値は十分にあると判断することができました。

ーー学習効果以外にMonoxerの導入効果を感じた点はありましたか?

松野:はい。「業務をしながら勉強する」ということ自体が大きなハードルであるにも関わらず、50名以上のスタッフが、時にプライベートの時間を使いながらも学習に取り組んでくれた。このこと自体が大きな効果であったと思います。

しかも「何十回も学習に取り組んだ」という方が、各空港に複数名もいたのです。そのような意欲的なスタッフに恵まれていることが改めて分かり、手前味噌ながら誇らしく感じました。

「学習のプロセスのデータ」が得られるという点には、各空港の教育担当者の注目が集まりました。集団指導を行うインストラクターにこのようなデータを共有できれば、より効果的な個の指導ができるのではないかという議論も生まれています。これは実証実験で初めて気づいたことであり、大きな可能性を秘めた部分だと感じています。

【今後の展望】26年の国際線新入社員を皮切りに、27年には国内線に拡大予定。グループ全体の教育訓練への展開にも期待

ーー今後の教育訓練におけるMonoxer活用の展望をどのように考えていますか?

松野:当初の予定通り、2026年4月から国際線旅客係員の新人研修で運用をスタートさせ、27年度には国内線でも運用する段取りを進めています。冒頭にお話したように、私達教育訓練部は空港の全セクションで働く方々の教育を所管していますので、地上運航支援業務や貨物部門など、他の領域への展開も検討中です。

安全第一の業務において、品質を落とすことなく教育訓練を変革し、より一層向上させていく。そのためにはデジタルツールによる訓練のパーソナライズが大きなキーになります。

そのようなツールの中でも、Monoxerは、「知識を”筋肉”のように使えるもの」として定着させる最適なアプリです。今後、必須の業務知識を定着させるツールとして旅客サービス以外の領域に活用を広げ、スタッフ一人ひとりが「人にしかできない業務」に時間を割ける状態をつくる。そこにつなげていきたいです。

(左:モノグサ株式会社 間明田 右:全日本空輸株式会社 松野様)

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