「営業が育たない」と感じたら見直す3つの視点

「同行もしている」「ロールプレイングもやらせている」「資料も一通り渡した」。それなのに、なぜかいつまで経っても一人前にならない。新人だけでなく、入社2〜3年目のメンバーについても同じように感じてしまう。

「営業が育たない」という悩みには、指導する側の熱量や工夫が足りていないという意味合いが含まれがちです。しかし実際に現場でよく見られるのは、指導自体はすでに十分な量が行われているのに、それが本人の成長という形で結実していないケースです。やっていることが間違っているわけではなく、向け先や積み上げ方のどこかにズレが生じているだけ、という状態です。

この記事では、すでにOJTや研修を一通り行っているにもかかわらず「育たない」と感じるときに起きがちなことを整理し、今の指導を否定せずに立て直すための見直しポイントを解説します。

「育たない」と感じるときに起きていること

まず押さえておきたいのは、「育たない」と感じられるメンバーの多くが、決して何もしていないわけではないということです。

  • 同行やロールプレイングには真面目に参加している
  • 商品知識やトークスクリプトも、一応は目を通している
  • 本人なりに、日々の商談をこなしている

こうした状態にもかかわらず「育っていない」と評価されるとき、原因を本人のセンスややる気に求めてしまいがちですが、現場でよく見られるのは次の3点のどこかに「ズレ」が生じているケースです。指導する側がこれまで積み重ねてきたOJTや研修の量そのものは、決して無駄になっていません。

すでにやっているのに伸びない3つの要因

1. 「教えた」と「身についた」の間に振り返りが挟まっていない

同行やロールプレイングを一通りやらせたあと、「お疲れ様、次も頑張って」で終えてしまっていないでしょうか。実践の機会自体は十分に用意していても、そこで何ができて何ができなかったかを本人の言葉で振り返る工程が抜けていると、経験が次に活きる形で定着しにくくなります。

これは指導が足りないという話ではなく、日々の商談やお客様対応に追われる中で、振り返りの時間を確保しづらいという、多くの営業組織に共通する構造的な課題です。

2. 「知っている」と「とっさに言える」を同じものとして扱っている

営業の世界には、唯一絶対の正解となる話し方や進め方は存在しない、という考え方があります。「聞く姿勢が大事」「アイスブレイクは必須」といった営業論も、相手や状況によって効く・効かないが分かれるものであり、どれか一つが正解ということはありません。

そのうえで見落とされがちなのが、「知識」と「スキル」の違いです。商品説明やQ&Aの内容を研修で理解させたことと、商談の緊張感の中でそれをとっさに口に出せる状態になっていることは、まったく別の力です。研修は一通り終えているのに、いざ商談になると言葉に詰まる、切り返しが一歩遅れる。こうした状態は、教え方が悪いのではなく、知識をスキルとして体に染み込ませる練習量が、教えた分に対してまだ足りていないだけ、というケースが多く見られます。

実際に、3期以上連続で増収している企業の営業推進・営業教育担当者106名を対象にしたモノグサ株式会社の調査では、約7割の企業が営業教育の一環としてロールプレイングを実施しており、「商品・サービスへの理解・説明力の向上」「提案数の向上」といった効果を実感しているという結果も出ています。裏を返せば、知識のインプットだけでは、多くの現場が物足りなさを感じているということでもあります。

*調査結果は「成長企業の営業研修に関する実態調査」をご確認ください。

3. 教える内容・水準が指導者によってばらついている

同行させる先輩によって、話す内容の粒度や重視するポイントが違うと、指導を受ける側は「結局何が正解なのか」がわからなくなり、成長のスピードにもばらつきが出やすくなります。

これは、ある指導者の力量が低いという話ではなく、優れた指導内容が個人の感覚の中にとどまり、組織として言語化・共有されていないために起きる現象です。属人化したノウハウを底上げする視点については、別記事でも具体的な手順を取り上げていますので、あわせてご覧ください。

▼ 属人化した営業ノウハウを組織の力に変える具体的な手順を知りたい方へ
営業の属人化を無くし、営業力の底上げをする5つのステップ

「育っていない」のではなく、「まだ噛み合っていない」だけ

ここまで見てきた3つの要因に共通しているのは、いずれも「今までの指導のやり方が間違っている」という話ではないということです。

同行の回数、ロールプレイングの実施、商品知識の研修。これらはどれも、育成の土台として欠かせないものであり、すでに現場で積み重ねられてきた財産です。変えるべきなのは、それらをやめることではなく、「振り返りを挟むか」「知識をスキルに変える練習量を確保できているか」「指導内容を言語化して共有できているか」という、向け先と仕組みの部分です。

今までの指導を否定する必要はありません。同じ量の指導から、振り返りと練習と言語化を少しずつ足していくことで、育ち方は変わっていきます。

明日から見直せる3つのポイント

  1. 同行・ロールプレイングの直後に、短時間の振り返りを必ず挟む:「今日できたこと」「次にやってみたいこと」を本人の言葉で1〜2分話してもらうだけでも、経験が記憶として定着しやすくなります。
  2. 知識を伝えた内容ほど、声に出す練習の機会を増やす:資料を読ませて終わりにせず、Q&Aやトークスクリプトを声に出して繰り返す時間を、意識的にスケジュールに組み込みます。
  3. 自分がうまくいった指導・商談の「型」を言葉にしてみる:ベテラン指導者が感覚でやっていることを、箇条書きでもよいので書き出してみる。それだけで、他の指導者にも共有できる形に近づきます。

よくある質問

Q1. 新人ではなく、入社2〜3年目のメンバーが育たない場合も同じ考え方で見直せますか?
はい。むしろ新人研修を一通り終えたあとの中堅層こそ、振り返りや練習の機会が減りがちで、知識とスキルのギャップが放置されやすい傾向があります。同じ3つの視点で見直す価値があります。

Q2. OJTや研修の回数を増やせば育つようになりますか?
回数を増やす前に、今行っているOJT・研修に振り返りと練習の工程が挟まっているかを確認することをおすすめします。同じ回数でも、振り返りと練習を足すだけで定着のしやすさが変わることがあります。

Q3. 指導者によって教える内容がばらつくのを防ぐには、何から始めればよいですか?
まずは、成果につながっている指導者のやり方を「何を、どの順番で伝えているか」という形で書き出してみることから始めると、他の指導者と共有しやすい形に近づきます。

Q4. 育成が「うまくいっているかどうか」を、感覚ではなく確認する方法はありますか?
同行回数や研修の実施回数だけでなく、本人が知識をどの程度言えるようになっているか、実践の振り返りがどの程度言語化できているかを、定期的に確認する機会を設けると、進捗を感覚だけに頼らずに把握しやすくなります。

まとめ

「営業が育たない」と感じる背景には、指導量の不足よりも、振り返りの有無・知識をスキルに変える練習量・指導内容の言語化という3つのどこかに、噛み合っていない部分があるケースが多く見られます。

これまでの同行・ロールプレイング・研修を否定する必要はありません。同じ量の指導に、振り返りと練習と言語化を少しずつ足していくことが、育ち方を変える近道です。


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