医療機器の製造販売のさらに先を目指すMonoxer活用 - 体系的に学べるカテ室看護師向け教育パッケージを提供

テルモ株式会社は、1921年設立以来、160以上の国や地域の医療現場に、50,000点を超える製品・サービスを届けてきました。近年、同社はより広く、術前・術後まで含めた医療現場の課題解決を目指し、新たなサービスの開発に注力しています。今回は、Monoxerを活用したカテーテル室の看護師向け教育パッケージと、そのパイロット運用についてお伺いしました。(本記事は、2025年10月31日取材時の内容になります。)


お客様情報
⚫︎ 企業名:テルモ株式会社
⚫︎ 業種:医療機器メーカー
⚫︎ 従業員規模:5000人~ 
⚫︎ 取材ご対応者様:心臓血管カンパニー インターベンショナルシステムズ事業 日本本部 事業企画チーム 杉山文哉 様

テルモ株式会社におけるMonoxerの活用シーン
⚫︎ 導入部署:心臓血管カンパニー インターベンショナルシステムズ事業 日本本部 事業企画チーム
⚫︎ 活用シーン:医療従事者の育成支援
⚫︎ Monoxer導入年度:2025年


導入事例サマリー

導入背景(目的・課題)

⚫︎ 同社は医師や看護師へのヒアリングから医療機関のカテーテル室の課題として以下の状況を聞いていた。製品の適正使用は同社にとっても重要な課題であった。
  ⚪︎ カテーテル室の看護師のスキルをカテーテル室で(行われる手技に)求められるレベルに引き上げたいが、
     多忙な医療現場において体系的な教育カリキュラムを組むことが困難。
  ⚪︎ 現場OJT頼みになり教育担当看護師の負担が増え、経験の浅い看護師はカテーテル室の業務に不安を抱えていた。

取り組み

⚫︎ カテーテルデバイスの製造・販売を行う同社が、Monoxer(学習アプリ)、360°映像コンテンツ、急変シミュレーションをまとめた、有償の「カテーテル室向け教育研修パッケージ」を開発。
⚫︎ 多忙な看護師に向けたいつでもどこでも学習できるコンテンツとして、パイロット運用を全国3施設で実施。

効果

⚫︎ 学習前後のテストにて平均点が1.5倍向上する学習効果が現れると同時に、カテーテル室業務の心理的ハードルを低減。
⚫︎ 既存のカテーテルデバイスやソリューションと組み合わせて医療現場への新たな価値を創出し、顧客の課題解決への貢献を実感。

【導入背景】カテ室看護師のスキルに存在する課題。カテーテル室で求められるレベルとの差を埋めるため、体系化した教育パッケージを届けたい

ーーインターベンショナルシステムズ事業の概要と、今回の取り組みの背景について教えてください。

杉山:私達の事業部では、心臓や下肢の血管の病気への血管内カテーテル治療や、血管内の状態を診る画像診断、肝臓がんの化学療法に関する製品などを開発し、提供しています。中でも「術中の手技成功率向上と手技の効率化」を実現するカテーテルデバイスは、その中核です。

しかし、日々医療現場のお客様と連携する中で実感しているのは、現場課題の多様化です。病院が安定した医療サービスを提供するためには、人員体制や従事者の教育体制を整え、医療サービスの質を向上することで、多くの患者さんに医療サービスを利用してもらうという循環を作っていかなければなりません。しかし、ここには多くの課題が存在します。

そのため、私達は、製品の製造販売に留まらず、術前・術後まで含めた広い視野で課題を捉え、製品以外のソリューションも提供する必要があると考えました。それが、今回カテーテル室看護師向けの教育パッケージの開発に踏み切った理由です。

ーー今回のMonoxerを活用した教育パッケージで解決したいカテーテル室の課題とは、どのようなものですか?

杉山:カテーテル室は、医師だけでなく臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技士、看護師など、多職種が協力して業務にあたる現場です。それぞれに高い専門性が求められるのですが、これまでの医師や看護師へのヒアリングから「看護師のスキル」がカテーテル室で(行われる手技に)求められるレベルに届きづらくなってしまうという構造的な問題があることが分かりました。そもそも医療機器の高度化や医療現場の複雑化で、看護師にはこれまで以上の高度な知識とスキルが求められるようになってきており、従来の集合研修や独学での学習では知識定着や戦力化までのスピードが追いつかなくなっているとお聞きしました。

そこに加えて、さらに三つの要因が、この課題を困難なものにしています。一つ目が、看護師全体の離職率が高く、人材が流動的で、定期的にカテーテル室業務に未経験者がアサインされること。二つ目は、総合病院にあるカテーテル室のほとんどの看護師が、病棟・外来・救急などとの兼務(週1から2週に1回)であり、経験が積みにくいこと。三つ目は、教育を担当する責任看護師も非常に多忙であるため、カテ室の教育体制が確立されておらず、体系化も難しいことです。

そのため、「どうしても教育は現場OJT頼みになってしまう」「教育担当看護師は都度指導が必要で負荷がかかる」「体系的な教育が必要だという認識はあるが、そこまではできない」「いざという時のために学習はしておきたいが、自主学習までは手が回らない」という声が現場から挙がってしまう状態になっていたのです。

それならばと考えたのが、多忙な現場の方々に代わり、私達が教育パッケージを開発・提供するというアプローチです。この方法ならば、教育担当看護師の方の時間コストを削減し、なおかつ経験の浅い看護師がいつでも学習できる教育環境を整えることができるのではないかと、私達は考えました。

ーーそのパッケージの中にMonoxerを組み込もうと考えたのはなぜですか?

杉山:弊社ではすでにMonoxerを社員教育に活用していましたので、Monoxerの特徴と有用性の高さは理解できていました。

今回のパッケージに組み込む学習ツールに求める必要条件は二つ、看護師がいつでもどこでも利用できることと、教育担当看護師が部下の学習状況を確認できることでした。Monoxerはスキマ時間に気軽に取り組めますし、「記憶度」という指標があることで、学習状態を数字で見ることができます。数値化されていれば「Aさんは○○の分野が強くて、△△の分野が弱い。なら、△△は対面で手厚く指導しよう」と、教育担当看護師が次のアクションにつなげやすくなります。

また、導入の意思決定を判断するためにも、効果測定の指標は必要でした。その点でも条件を満たしていたことから、Monoxer活用を決断しました。

【取り組み内容】学習アプリ、360°映像コンテンツ、急変シミュレーションを1つのパッケージに。多忙なカテ室看護師向け教育サービス

ーー今回パイロット運用を行った新たな教育ソリューションの内容について教えてください。

杉山:私達が提供するのは、アプリ学習による座学・視聴覚ツールによる疑似体験・シナリオトレーニング型のデモンストレーションの3つを統合した教育パッケージです。

座学だけでカテーテル室で求められるレベルへ到達させることは現実的ではありません。効果的な学習定着を助けるため、弊社ではラーニング・ピラミッドに沿い、三つのカテゴリに分けてソリューションパッケージを設計しました。

基礎知識を身につける座学は御社の学習アプリ『Monoxer』です。そこで身につけた知識を、『360°映像コンテンツ』を使った疑似体験を繰り返し行うことで、実際のイメージに結びつけていきます。

この2つで学んだ後に、弊社のトレーニング施設であるテルモメディカルプラネックスで提供していた急変シミュレーショントレーニングのプログラムを、実際に院内で医療機器を用いて行うことで、スキルとしての定着を図れるようにしています。このシナリオトレーニングは、現場に近い環境・シチュエーションにすることが重要ですので、トレーニングを実施する際は医師と教育担当看護師との事前打合せでシナリオや到達目標・ゴールを設定し、施設毎に内容をカスタマイズして提供します。

ーーMonoxerの具体的な学習内容はどのようなものですか。

杉山:Monoxerでは、カテーテル検査・治療に必要な知識を、大きく5つの学習カテゴリーに分けてBookにしています。具体的には「1.カテーテル検査と治療に関する用語」「2.心臓における病態と解剖」「3.合併症と必要な薬剤」「4.カテーテル検査・治療で使用するデバイス」「5.手技の手順や流れ」です。各カテゴリー平均30問から40問、全体で200問弱という構成です。

問題は参考書を元に制作し、医師にも監修して頂いています。ただ、先ほどお話したように、弊社の社員教育にMonoxerを活用していましたので、内容が重複していたカテゴリーの問題は、今回のパッケージにも一部で再利用しています。

ーーパイロット運用の詳細についても伺わせてください。

杉山:この教育パッケージを有償サービスとして医療現場のお客様に提供していくためには、定量・定性での学習効果の測定・検証が欠かせません。そのため、全国3施設、計18名の看護師の方々に、Monoxerと360°映像コンテンツを一ヶ月半学習いただいた上で、評価を行いました。学習効果の測定は、カテーテル業務の知識を問う同じレベルの問題を2回分作成し、学習前と学習後に解くことで求めることにしました。

【効果実感】満点取得者も生まれるほどの学習効果と心理的ハードルの改善。現場看護師からは、事業継続を望む多数の声

ーーパイロット運用の結果、教育パッケージの効果はいかがでしたか?

杉山:学習前と学習後のテストの結果、事前テストの平均点が15点満点中7.9点だったのに対し、学習後は12点と大幅に理解度が上昇しました。満点を獲得した受講者も出ています。この結果から、医療機器に関する知識学習を行う際にMonoxerと360°映像コンテンツ、急変シミュレーションを活用することで、学習内容の知識定着率が大きく高まり、記憶定着の早期化を実現できることが実証できました。

また、学習者からは「カテーテル室の業務への心理的ハードルが下がった」「これまで知らなかった知識を学ぶことでカテーテル検査・治療への興味関心が高まった」という声が得られました。実験後、教育担当看護師を含む十数名の看護師の方々から「ぜひ今後もこの事業を継続してほしい」という声もいただいており、高い満足度を得ることができたと感じております。

弊社としてはこの成果を受け、2026年1月から本パッケージを有償サービスとしてご案内していくことを決めました。

ーー教育パッケージの一つとしてMonoxerを組み込むことで、御社にとってはどのような価値が生まれたのでしょうか。

杉山:いつでもどこでも、繰り返し学ぶことのできる学習アプリを取り入れることで、カテーテル室の業務を兼務する看護師の方々が自信持てるようになるための無理のない学習環境を用意できたことは、大きな成果だと思っています。

弊社は医療機器の製造・開発に長けていますが、術前・術後の現場の課題を解決するためには、御社のようなシステムを開発できる協力企業の力が欠かせません。弊社の提供できるソリューションとMonoxerを組み合わせることで、お客様の課題への総合的な解決策をご提案できたことは、弊社にとって価値ある一歩です。

このようなアプローチで医療現場の方々とのタッチポイントが増えることで、より精度の高い課題理解と新たな解決策のご提案につながる可能性も感じています。

【今後の展望】医療現場のトータルソリューション提供企業として、脳血管や腹部領域にもコンテンツ拡充を

ーー今回の教育パッケージに関して、描いている今後の展望を教えてください。

杉山:2026年1月から全国の医療機関に向けて、本教育パッケージを有償サービスとしてご案内していく予定です。当然、Monoxerで提供するコンテンツもより一層拡充して参ります。

カテーテル室は心臓カテーテルの検査・治療だけを行っているわけではありません。「腹部領域や脳血管領域に関しても学習コンテンツを追加してほしい」というニーズもいただいております。

昨今、大学などの教育機関ではデジタルを活用した医療教育の提供は当たり前のものとなり、各施設様は「医療従事者の満足度を上げる」という観点から教育予算をしっかり割き、デジタル化への対応ならびに院内の教育体制充実を急いでいます。

このような観点からも、私達テルモは医療現場のお客様に貢献できるトータルソリューションの開発・提供を続けて、医療現場の皆様を支えていくつもりです。

※尚、本教育パッケージは医療機器の販売・購入に関わらず、単独で購入可能です。

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