セミナーレポート

6/2「AI時代に必要な国語力を考える~小学生編~」セミナーレポート

こんにちは、モノグサの中村です。
2022年6月2日(木)に、「AI時代に必要な国語力を考える~小学生編~」セミナーを開催いたしました。
なぜこれからの時代に、より一層の国語力が必要とされるのか?
将来役立つ国語力を身に付けるため、小学生の間にできる学習方法とは?
学校や塾で小学生のご指導をされている方を始め、教育関係の皆様に本セミナーの模様をレポートいたします!

セミナー登壇者プロフィール

堀川 直人(ほりかわ なおと)様

株式会社SRJ代表取締役
一般社団法人 教育アライアンスネットワーク(NEA)理事、一般社団法人 日本青少年育成協会 理事
1973年 大阪府生まれ 関西学院大学商学部卒。株式会社SRJ代表として速読解を通じた能力開発の有効性を訴え続けている。

柳生 好之(やぎゅう よしゆき)先生

早稲田大学第一文学部総合人文学科日本文学専修卒業。
リクルート「スタディサプリ」現代文講師。
難関大受験専門塾「現論会」代表。
東進ハイスクールなど大手予備校勤務やZ会東大京大コース問題製作を経て、リクルート「スタディサプリ」に参加。
東大・京大・早大・難関国公立大・難関私立大・大学入学共通テストなどの受験対策講座を多数担当している。

竹内 孝太朗(たけうち こうたろう)

モノグサ株式会社 代表取締役CEO
名古屋大学経済学部卒。2010年に株式会社リクルートへ入社をし、2013年より「スタディサプリ」にて高校生向けサービスの立ち上げに従事。
2016年にモノグサ株式会社をCTO畔柳と共同創業。3児の父であり、Monoxerを活用したAI時代の英才教育を実施中。

【小学校における国語を取り巻く現状】小学校の国語は重要、一方で教育現場は英語や算数に重点を置く傾向に

竹内:他教科と比較すると、国語にはこんなにも授業時間数が使われていることがわかります。我が家には子どもが3人おりまして、その中に小学2年生がいます。その子の周辺情報から小学校低学年の国語は、主な授業内容が「音読」、宿題が「漢字」ではないかと推測しています。
語彙の意味、文章の構造、内容の理解を深めるといったことは、小学2年生までには行っていないという感覚です。

堀川様:小学校では英語の授業時間数が増えていますね。「国語力がない土台に、外国語の勉強はどうなのだろう?」という1つの疑問があがってきます。弊社の速読教材を導入されている会員さん達からは、「国語力が固まっていないから、速く正確な文章読解ができない」という声を耳にすることがあります。

竹内:中学入試において上位校の国語の入試問題は、難関私立大学の現代文と同じくらい難しいといわれています。中学受験で上位校を目指すには、小学5年生までにどれくらいの語彙数が必要か今調べているのですが、25,000語程度であることがわかりました。
一方、英語は中学3年生までにその10分の1の2,500語を憶えれば良いことになっています。もちろん、これでは英語を母国語とする国で話せるレベルには達しませんが、国語より圧倒的に憶えることが少ないことがわかります。
国語は憶えることが多い教科といえるのに、学習にかける時間は少ないと思います。家庭のサポートがなければ、学校だけでは足りないということが気になったポイントです。

堀川様:私も同様な問題を感じています。塾も保護者も国語よりも算数、英語、プログラミングの学習に目が向いています。

【中学校における国語を取り巻く現状】理系教科にも読解力は必要、読書スピードを上げることは成績向上の土台


堀川様:指導要領が改訂され、中学校においては国語だけでなく全体的に教科書のページ数が増えました。理系科目でも読解力が必要とされ、文章題も増えました。

竹内:処理量が増えてきたということは明確です。

堀川様:ここで教育者の方に問いますが、生徒さんたちの読書スピードを把握していますか?読書のスピードは成績向上の土台です。読解力とともに、読書スピードが基礎能力の1つの判断材料になることは確かです。

【高校における国語を取り巻く現状】大学受験で読むスピードが問われる、「文字/分」を数値化して明確に

堀川様:大学受験では、読むスピードによって大きな差が出てきます。大学入学共通テストで読むスピードを「500文字/分」と「1200文字/分」で比較すると、速く読んだ方が問題を解く時間が圧倒的に増え、余裕も生まれます。

竹内:「どれくらいのスピードで読めているか」を数値化して可視化しないと、テストに失敗した理由が「早く読む力がなかった」のか「解くテクニックがなかった」のか判別ができません。
早く情報を処理すること、ここに注目していかなければ最終的に大学受験の本番で困ることになります。欧米では1分間に何ワード読めるか、WPM(ワード・パー・ミニッツ)が意識されています。日本語ではワードという単位の概念が異なるかもしれませんが、小中学校から意識していくべきだと思います。
 

堀川様:新学習指導要領の改訂によって、高校では2022年度から国語の選択科目が「論理国語」と「文学国語」に分かれました。

柳生様:論理と文学が明確に分けられたのは意味があると思います。
国語の先生の多くは大学で日本文学を専攻しており、日本文学では例えば夏目漱石の小説なら、思想的・文化的・時代的背景を含めて一つの文章を読みます。
このように学んできているため、生徒の国語指導に当たる際もこうした奥深い読み方を追求する傾向にあります。

しかし文学部へ進学する生徒は一部であり、その他の法学部・経済学部・理工学部などでは、書かれている内容を書かれている通りに読むことが要求されます。
そこで、奥深い読み方を身に付けたい生徒は「文学国語」で学び、一般的な読解力を身に付けたい生徒は「論理国語」で学べるように分けられたのだと思います。

「読解力」があれば大学入試問題も解ける

堀川様:大学入試がどのように変わったのか実感して頂くために、実際の問題を解いてみましょう。

柳生様:この問題のように、共通テストの第1問は基本的に論理国語となっております。
まず前提として日本語文では「主部の説明は述部に来る」と決まっています。
そこで問題の「民間伝承としての妖怪」に対する述部を見ると「そうした存在だったのである」とあり、「そうした」の指す内容を辿ると冒頭の妖怪の説明が答えとなるため、正解は①となります。
このように論理国語では、書かれている内容を読むだけの情報処理のような読み方となり、文学的な読解力とはまた別物であることが分かると思います。

柳生様:これは2021年の早稲田大学人間科学部の問題です。コンピュータについて書かれた文章の読解で、一見難解なように感じられるかもしれません。
しかし複雑な背景知識を持っている必要は無く、こちらも主部と述部の関係さえ分かれば問題を解くことができます。
問題では「構文論(シンタックス)的であるだろう」という述部の説明について聞かれているので、これに対する主部を見ると「計算機であるコンピュータ」が該当します。
つまり、ここではコンピュータが主語となっている選択肢を選べば良いので、答えは「ニ」となります。

竹内:こうした理解が難しい文章の問題でも、論理力や文法力があれば解けることを早いうちから意識する機会を与えてあげることが必要ですね。


堀川様:では、小学生のうちからどのような力を鍛えれば良いか、弊社が提供している速読解講座の問題を解きながら考えてみたいと思います。
こちらの問題ですが、竹内代表、これは正しいでしょうか?

竹内:下の文には「以上」が抜けているので、正しくないと思います。

柳生様:正解です。上の文を読むと、化合物は「2種類以上の原子が組み合わさってできている」と書かれています。つまり、原子の数は3種類でも4種類でも良いことになるため、仰る通り「以上」が抜けている点が間違いとなります。

しかし多くの方は、下の文を見ると化合物の説明になっているので「1種類の原子からできているのは単体であり、化合物ではない。だから間違っている」と判断したかもしれませんが、その考え方は誤りです。
「または」という結合詞を使うと、前後のどちらかが正しければ全体としては正しいことになります。
例えば「柳生好之は現代文の講師、または日本の首相である」という文章が正しいことを考えるとわかりやすいのではないでしょうか。

竹内:「または」の場合、片方を満たしていれば正しいのですね。大人になると知識がどんどん増えていくため、正しく読み取ろうと思っていても、気付けば知識だけで解釈をしがちです。
そこで、小学生のうちから文法力や論理力を鍛えるべきだと思います。

「語彙」「文法」「論理」の3要素が「読解力」に必要

堀川様:本日のテーマの一つである「読解力」について、まずは「語彙」「文法」「論理」といった3つの要素に分解する根拠をお伺いしていきたいと思っております。

柳生様:はい。まず入試問題ではすでに世の中に存在する文章を問題にすることになります。その際に問題としてちょうど良い文章があれば良いのですが、中にはやたらと語彙レベルが高くて読み辛かったり、逆に語彙レベルが低くて読み易すぎる文章もあります。
そこでどのように難易度を調整するかというと、例えば語彙レベルが高い問題では、文法レベルを下げた問題を作るといった形になります。

このように文章には基本的に「語彙レベル」「文法レベル」「論理レベル」という水準がそれぞれあり、問題ではそのどこかで難易度を調整していくため、この3つの観点で読解力について捉えていくと非常に理解しやすくなると思います。

堀川様:では、まず語彙の身に付け方についてはどのような方法を取るべきでしょうか?

竹内:一番良い語彙習得の方法は体験することだと思っています。
例として私は子供の頃野球チームに所属していたのですが、ある日監督が「それぞれのグローブを持て」と言ったことがありました。
その時「それぞれ」という言葉の意味を知らなかったのですが、周りの友達がみんな自分のグローブを拾うのを見て「『それぞれ』ってそういうことか!」と理解しました。
しかし必要な全ての語彙をこのように体験することも不可能だと思うので、絵本や漫画を使った擬似体験をさせていくことも必要だと感じています。

柳生様:私も絵本や漫画はおすすめしています。普段馴染みの無い言葉であっても、絵と一緒に見れば理解が深まると思います。
また擬似体験に近い形では、Googleなどの検索機能でも言葉を調べると多くの画像が表示されるため理解がしやすいと思われます。
やはり視覚情報と合わせて言葉を習得するのが良いと感じますね。

竹内:ただし絵本や漫画に全ての語彙を落とし込めるかというと難しい部分もあり、どこかで文字情報から語彙を習得していく段階に移行していくべきだとも思っています。
小学生の場合であれば、どの程度の水準から文字情報からの語彙習得に踏み込んでいけるか、といった目安やイメージがあれば柳生様にお伺いしたいです。

柳生様:一般的には小学5・6年生になると段々と抽象的な思考が身に付いてくるとされていますので、文法を学習するのもこのあたりのタイミングから始められると上手くいくケースが多いです。
しかし特にその時期はお子さんによって成長のスピードが違うので、仮にまだ抽象的な思考が出来なかったとしても心配する必要はありません。

堀川様:まずは絵本や漫画、図鑑などで文字に対する抵抗感を無くしていきつつ、徐々に新聞や辞書を読んでいくといったような、自然な形で段階的に学習が進めていけると良いですね。
次に文法については、どのように力を付けていくべきでしょうか?

柳生様:小学生の場合、文法を概念的に理解できるかどうかはお子さんによって違ってきます。
理解できるのであれば中学生の文法を勉強すれば良いと思うのですが、まだ理解できないといった場合には、短文で出題されるドリルのような教材を繰り返し文法的思考を身に付けていくのがおすすめです。

竹内:教科書のように小学生が身近に触れる文章には、簡単な表現で書かれた物語的な長文が多いと思われます。
もちろん心情把握の題材としては優れていると感じるのですが、文法的に重要な文が並んでいるというわけではありません。
教科書だけで文法をしっかりトレーニングするのは難しいと感じるので、適切な難易度で短文の問題を出題してくれるドリル学習を行うことは、非常に重要だと感じています。

堀川様:最後の論理についてはなかなか難しい部分もあるかもしれませんが、どのように学んでいけば良いでしょうか?

柳生様:論理については本当ならば規則を全て学んでから実践できると良いのですが、論理の規則を全て学べるのは高校生以降となっています。
つまり、原理原則から考えるといった方法は高校生にならないとできないのですね。

なので小学生の間にできることとしては、日頃の出来事における「矛盾」を意識してみたり、論理パズルや推理ゲームを遊びながら論理力のトレーニングをしていくのが良いと思います。

すべての学習成果に関わる「国語力」

堀川様:本日様々な形でお話した国語力は、あらゆる教科のベースになっていきます。
そのために必要な知識と読解力を組み合わせることによって、それぞれの教科の学習成果、ひいては成績向上に繋がるということですね。

しかし、いくら知識があっても読解力が無ければ受験には対応できないので、先ほどお話した最低限の「語彙力」そして「文法力」、小学生のうちはやや難しいかもしれませんが「論理力」。
これらを意識しながら指導に当たることの必要性を保護者の方にもご理解いただいて、家庭と一緒になって取り組んでいければと思っています。

質疑応答・感想

―児童が偏りなく語彙を増やすといった観点では、どのように読書の指導をすべきでしょうか?

竹内:私自身が子供に実践している方法としては、逆にまず語彙を覚えさせてからそのレベルに合った本を選んで勧めるようにしています。
語彙習得のために本を読ませるのではなく、本を楽しんでもらうために先立って必要な語彙を習得させる、といった感覚ですね。

柳生様:先進的な方法で素晴らしいと思います。やはり急に難しい本を勧めて理解できない、というケースが一番良くないと感じます。
子供が自発的に本を手に取るようになるためにも、読書を楽しいと思えることが第一です。偏りについても心配することはなく、好きな本を読みたいだけ読んでいけば良いと思います。
必要な語彙を満遍なく身に付ける機会については、教育によって与えていけば良いと考えております。


―子供が疑問をすぐ口に出せて、それに対し大人が真剣に答えてくれるような環境作りが国語力を向上させるために大切だと感じました。

竹内:仰る通りだと思います。多くの知識を蓄えたとしても、やはり使う機会が無ければ意味をなさないと感じます。
何か質問をして、それに対して大人がちゃんと答えてくれる。こうしたやり取りも子供にとっては一つの成功体験であり、積み重ねていくことでそこに意味を感じていけることが重要だと思います。

堀川様:どんな質問であっても、まずは「良い質問だね!」といったようにしっかり受けとめていくことが大切ですよね。


―語彙力を伸ばすためには家庭での会話が大切で、インプット・アウトプットを繰り返すことで身に付いていく、という堀川様のお話に大変共感しました。

柳生様:私も家庭での会話が大切だという点に同意します。
家庭においてお子さんから質問をされることは多いと思いますが、そこからどう広げていくかも重要ではないかと考えています。
お子さんが小さいうちはそのまま答えても良いと思うのですが、ある程度大きくなってきたら「辞書で調べてごらん」と導くこともできます。
そうして辞書を引く習慣が身に付けば、それもまた一つの成功ではないかと思います。

竹内:私も国語力において家庭でのコミュニケーションが充実していることは最重要だと感じます。
しかし家庭環境は様々であり、中には積極的な会話が難しいご家庭もあるかもしれません。
あらゆる立場の子供がいる中で、なるべく全員へ均等に国語力を伸ばす機会を与えられるため、学校や塾という存在だからこそ出来る方法についても皆様と考えていければと思っております。

おわりに

当日ご参加くださった皆様、また、本レポートを最後までお読みくださった皆様、誠にありがとうございました!
Monoxerに興味が湧いた!もっと知りたい!という方は、是非資料請求や無料トライアルのお問い合わせをいただけますと幸いです。
また、今後も継続的にイベントを実施しておりますので、是非ご参加ください。
今後とも、解いて憶える記憶アプリMonoxerをどうぞよろしくお願いいたします。

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